「幸せはシャンソニア劇場から」

予想通りの映画である。フレンチミュージカル。第二次大戦前夜の不況下のフランスの下町の劇場を舞台に繰り広げられる庶民たちの明るくたくましい人情物語。仲間がいることの喜び。友情と恋。古き良きフランス映画の香りを楽しんでください。名作「天上桟敷の人々」を思い出す方もいるでしょう。シャンソンの楽しさをじっくりご堪能あれ!
アメリカのミュージカルだったら、もっとヒーローとヒロインの恋物語にポイントを持っていくのだろうけれど、登場人物のそれぞれにエピソードがあり、劇場に集まる人たちの群像劇になっているあたりが、フランス映画らしさかな~。
そう考えると、これは劇場をめぐる映画なのだ。人々の夢を紡ぐ場所としての劇場。そこに夢を求めて集めって来る人々の喜怒哀楽と人生。あくまでも場所としての劇場が主役であり、人間たちはその主役である劇場の登場人物に過ぎないのだ。「ニューシネマ・パラダイス」という映画館を舞台にした名作があったが、あれも映画館の映画だった。
ちょっと毛色は違うが、最近のフランス映画、オリビエ・アサイヤスの「夏時間の庭」という映画もまた、家と庭の映画だった。そこに集う家族のそれぞれの物語なのだが、中心の主題はあくまでも「家の庭」なのだ。家の庭で時間が移ろっていく。そこで過ごした人々の記憶を残しながら。そういう映画だった。
オムニバス映画「パリ、ジュテーム」やセドリック・クラピッシュの「PARIS」もまた言うまでもなく、PARISという場所=街の映画だ。あくまでも人間たちは、そこで生きるそれぞれの人生を送る登場人物に過ぎない。
人物中心にその主役の人生を掘り下げていく映画がある一方で、こういう場所が主役となる映画もまた存在するのだ。僕は、そういう場所の記憶をめぐる映画が、わりと好きなのかもしれないと思う。
原題:Faubourg 36
監督・脚本:クリストフ・バラティエ
音楽:ラインハルト・ワグナー
出演:ジェラール・ジュニョ、クロビス・コルニアック、カド・メラッド、ノラ・アルネゼデール、ピエール・リシャール、ベルナール=ピエール・ドナデュー、マクサンス・ペラン
製作国:2008年フランス・チェコ・ドイツ合作映画
☆☆☆3
(シ)
スポンサーサイト
tag : 音楽