「理由なき反抗」ニコラス・レイ

ジェームズ・ディーンが最も輝いている映画である。あまりにも有名な青春映画だ。
冒頭、路上に捨てられたゼンマイ仕掛けのサルの玩具に新聞紙をかける泥酔したジェームズ・ディーンがいい。この映画は、ジム(ジェームズ・ディーン)が補導された警察所の夜から次の日の夜までのたった一日を描いた映画だったことが、今回見直してわかった。余分なところがない青春映画の名作だ。
1950年代のアメリカの家庭、強い父親像への渇望が描かれる。ジムは父親に愛情を感じつつも、母親の言いなりになっている不甲斐ない父親に我慢がならない。祖母の食事の世話をする情けないエプロン姿の父親が象徴的に描かれる。そして彼は「ヒヨッコ」と罵られ、売られたケンカを買うためにチキンレースをやることになる。父親にそのことを相談するも、ハッキリしない態度に苛立ち、男の名誉に関わる問題だと言いながら家を飛び出す。
一方、ジュディ(ナタリー・ウッド)は父親にキスを拒否され、愛されていないと苛立つ。もういつまでも子供じゃないと言う父親。警察に夜間外出で保護された冒頭でも父親が迎えに来なかったことに文句を言っていた。優しい父の愛を求める娘。アメリカ映画はいつだって家族愛がテーマだ。そして強い父親像、家族を守る強く優しい男が求められ、不仲な両親や親子関係がテーマになる。両親が不在で黒人のメイドに生活を面倒をみてもらっているプレイトー(サル・ミネオ)は、愛を求めて寂しさのうちにジムに付きまとう。そしてジムを助けるために枕の下から拳銃を持ち出し、孤独の恐怖から発砲し、最後は警官に撃たれて死んでしまう。強い父親の不在に少年少女たちは、苛立ち不安になり、愛を求めている。
断崖で車を使って度胸試しをするチキンレースは有名だ。ジュディが車のライトに照らされ合図を送り、不良少年のバズ(コリー・アレン)とジムは車をスタートさせる。翻るジュディのスカートと躍動感。闇(=死)に向けて走らせる男たちの誇りを賭けた戦い。男の度胸を象徴する乗り物として「車」が使われている。プラネタリウムの場面で、バズたちの不良グループがジムの車のタイヤをナイフでパンクさせる場面がある。「車」は男の誇りや名誉と関わっているのだ。そして車の転落と死。男の名誉を賭けた戦いはいつだって死と隣りあわせなのだ。
後半部の舞台である廃墟になっている誰もいない大きな屋敷こそ、不在の壊れた家族そのものだ。不在の家族の中で、ジムとジュディは初めてお互い愛する相手を見つけるが、置いてきぼりにされたプレイトーは孤独な不安のなかで拳銃を発砲してしまう。
映画のほとんどは夜のシーンだ。それぞれの孤独な夜。その夜に赤いジャケットと白いTシャツにジーンズ姿のジームズ・ディーンが強い父(父権=強い男)と愛を求めて輝いている。アメリカでは強い父権性を求めて、先行する大人の世代への若者たちの反抗がこの時代から始まったのかもしれない。
原題:Rebel Without A Cause
公開: 1955年
監督: ニコラス・レイ
原案: ニコラス・レイ
脚本: スチュワート・スターン、アーヴィング・シュルマン
撮影: アーネスト・ホラー
音楽: レナード・ローゼンマン
出演: ジェームズ・ディーン、ナタリー・ウッド、サル・ミネオ、コリー・アレン
☆☆☆☆4
(リ)
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tag : 青春