「勝手にしやがれ!!強奪計画」黒沢清

かつてテレビの人気シリーズ「傷だらけの天使」の萩原健一と水谷豊のコンビがあった。男二人のその日暮らしの哀愁のある生き様が心に沁みた。チンピラ二人組がトラブルに巻き込まれるストーリー。最近では、映画もテレビも話題の「まほろ駅前多田便利軒」の瑛太と松田龍平のコンビがなかなかいい。松田龍平は、近々2作目が公開される「探偵はBarにいる」シリーズでも大泉洋とコンビを組んでいる。男2人組のトラブル巻き込まれ事件モノは、なぜか収まりがいい。
さて、黒沢清のこの映画はかなりいい加減な設定の軽いタッチのドタバタコメディである。ストーリーがご都合主義的なのである。「傷だらけの天使」で岸田森と岸田今日子の危険な仕事をチンピラ二人に依頼する役割を、ここでは洞口依子とオカマの教授という設定の大杉漣がやっている。ある意味、「傷だらけの天使」へオマージュか。
さらにこの映画のヒロインとなる七瀬なつみの天然ボケぶりが凄い。怪我の手当てをしてくれた幼稚園の先生で、哀川翔にとって天使かと思いきや、前田耕陽が連れてきたキャバクラ女でもあり、父の腎臓移植手術のために3000万が必要だという訳アリ女だ。情に厚く男気のある二人が彼女のために一肌脱ぐのだが、七瀬なつみの天然ボケのために、次か次へと厄介事が大きくなる。まさに疫病神女だ。彼女の父親の手術を失敗したダメ医者の菅田俊も貧乏神のように彼らに付きまとい、笑えるほどのダメ男とダメ女ぶり。何しろ、ヤクザに渡すヤクの運び屋の仕事をしたのに、その5000万もするヤクの結晶の価値を聞いて、七瀬なつみがカマンベールチーズと交換して持ち帰ってしまうのだ。そんなメチャクチャなストーリーで、やくざに追われ、撃たれても死にはしない。お金はないはずなのに、いい加減なストーリーで親戚からお金が手に入り、海外で結ばれたというダメ女とダメ男。
二人の自転車移動撮影で始まり、階段の上下運動やら、ゴミ袋やら、赤い壁の部屋、ヤクの結晶を投げて運河に落としたり、テンポよく、軽快に、いい加減に、バカバカしく、映画が運動していく。それを楽しめばいい映画だ。
製作年:1995年
製作国:日本
配給:ケイエスエス
監督:黒沢清
脚本:安井国穂、黒沢清
撮影:喜久村徳章
助監督:青山真治
キャスト:哀川翔、前田耕陽、七瀬なつみ、菅田俊、洞口依子、大杉漣、國村隼
☆☆☆☆4
(カ)
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