「ブルージャスミン」ウッディ・アレン

辛辣な映画である。情け容赦ない。変態ロリコン?監督ウッディ・アレンの新作。ケイト・ブランシェットはこの映画でアカデミー賞主演女優賞を獲得した。テネシー・ウイリアムズの「欲望という名の電車」が下敷きとも、同じような金にまつわる詐欺事件で投獄された男の奥さんがモデルだとも言われているが、まぁウッディ・アレンが描いたこのジャスミンという女には救いがない。
セレブを棄てられない高慢さと不安症と病的な壊れ方は、哀れささえ誘う。冒頭の飛行機内での喋り続ける姿は、まさに病的な滑稽さだ。だがしかし、その哀れさを誘う人間像に観客を共感などさえはしない。どこまで愚かなのかという突き離し方が凄い。そうかと思う一方で、妹のジンジャー(サリー・ホーキンス)やその彼氏アル(ルイス・C・Kア)や元夫のオーギー(アンドリュー・ダイス・クレイ)たちのブルーカラーを共感込めて描いているわけではない。貧しくて単純でバカで暴力的な粗暴さ。ウッディ・アレンはセレブの高慢さにもブルーカラーの単純バカさにもウンザリしているのだ。その皮肉が今回は特にキツイ。ウッディ・アレンは、最近のヨーロッパの街を舞台にした近作は、人間的愚かさや愛に盲信する単純さをロマンチックに共感させて描いた感じもするが、今回のアメリカを舞台にした映画は徹底的にクールだ。クールなコメディとも言える登場人物たちへの距離感が感じられる。登場人物への愛がないのだ。ジャスミンの夫のハル(アレック・ボールドウィン)の女グセの悪さなどほとんど病的だ。それはウッディ・アレン自身へのアイロニーでもあるのか。ウッディ・アレンのプライベートの病的な女性遍歴がどんなものなのか、本当のところはよくわからないが、彼は人間の愚かさに対する皮肉をいつも自虐的に描いているのかもしれない。
原題 Blue Jasmine
製作年 2013年
製作国 アメリカ
配給 ロングライド
上映時間 98分
監督:ウッディ・アレン
製作総指揮:リロイ・シェクター、アダム・B・スターン
脚本:ウッディ・アレン
撮影:ハビエル・アギーレサロベ
美術:サント・ロカスト
衣装:スージー・ベインジガー
編集:アリサ・レプセルター
キャスト:ケイト・ブランシェット、サリー・ホーキンス、アレック・ボールドウィン、ピーター・サースガード、ルイス・C・K、ボビー・カナベイル、アンドリュー・ダイス・クレイ、マイケル・スタールバーグ、タミー・ブランチャード、マックス・カセラ、オールデン・エアエンライク
☆☆☆3
(フ)
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