「風に濡れた女」塩田明彦

日活の「ロマンポルノ」の45周年を記念し、気鋭の映画監督たちが新作ロマンポルノを手がける「日活ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の一作。塩田監督のほかに、行定勲、白石和彌、園子温、中田秀夫の計5人の監督がこの企画に参加している。僕は一番見逃せないと思ったのが、この塩田明彦監督作品。彼の初期作品には、宮崎あおい主演の『害虫』、変態的青春映画『月光の囁き』などのキラリと光る傑作があるからだ。
それで期待して観に行ったのだが、やや肩透かしの野獣バイオレンス・セックス映画だった。もっと禁欲的な変態的エロスを期待していたのだが、どちらかというと乾いた笑いと不条理なナンセンス、さらに自然と一体化するような野獣的エロスへと二人が昇華していく物語。まぁ、楽しめると言えば楽しめるのだが、期待したものとは違った。
オープニングの女が登場する自転車で海に飛び込むシーンはいい。無造作に濡れたシャツを脱ぎ、自然と胸が露わになる。そんな女を無視して、防波堤で本を読む男。映画は、この自然そのものの欲望の塊りのような女(間宮夕貴)と都市の人間関係から逃げてきた無関心を装う男(永岡佑)とのバトルのような愛の物語だ。男は森のなかでひっそりと誰とも関わらずに暮らしている。どうやら演劇をやっていた男で、女を絡めた人間関係のトラブルから逃げてきたらしい。しかし、そんな無関心な男と出会いつつ、相手にされない女は、様々な方法で男の気を惹こうとする。まさに男は、野獣のような女の獲物である。途中、彼がかつて所属していた演劇集団が登場し、つまらないアングラ芝居的な時代錯誤のような場面もあるのだが(塩田明彦の師匠である大和屋竺的な展開)、最後は自らの呪縛から解放されたかのように、二人は野獣のように相手を求めあっていくのだ。
森の中に作られた掘っ立て小屋が壊れるように、自意識は簡単に自然と欲望の力とともに崩壊し、森には野獣の声がこだまする。
製作年 2016年
製作国 日本
配給 日活
上映時間 78分
映倫区分 R18+
監督:塩田明彦
脚本:塩田明彦
撮影:四宮秀俊
照明:宮永アグル
美術:竹内公一
編集:佐藤崇
音楽:きだしゅんすけ
キャスト:間宮夕貴、永岡佑、テイ龍進、鈴木美智子、中谷仁美、加藤貴宏、赤木悠真、谷戸亮太、池村匡紀、前田峻輔、大西輝卓
☆☆☆3
(カ)
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