「美しい星」吉田大八

今年は宇宙人ものが大流行らしい。アメリカ映画の『メッセージ』も宇宙人との対話の話だったそうだが、残念ながら見逃した。黒沢清の新作『散歩する侵略者』も地球を侵略しに来た宇宙人に体を乗っ取られる話だという。今から楽しみだ。
さて、この映画、三島由紀夫原作で、父は火星人、息子は水星人、娘は金星人、母は地球人という自らの故郷の惑星の出自に気づいてしまった家族の奇妙な物語である。予告編を観て、もっと笑えるのかと思ったが、それほど笑える映画ではなかった。リリー・フランキーのシュールな演技が際立つ映画であり、橋本愛の透明感もどこか地球離れしており魅力的だ。『桐島、部活やめるってよ。』『紙の月』と佳作を連発している吉田大八監督がどうしても撮りたかった映画ということで期待したのだが、そこまで面白くはなかった。
霊感商法的な「美しい水」を売る妻の中嶋朋子が一番不気味だったとも言えるが、登場人物も誰もがどこか虚ろで、取り憑かれている。実際にUFO(宇宙人)がいるのか、それぞれの脳内幻想なのか、どちらともとれるし、曖昧な作りになっている。佐々木蔵之助のぶっ飛んでる水星人の不気味さは、どこか地球人っぽいリリー・フランキーと対をなすものであった。リリー・フランキーの俗っぽさが、なんだか可笑しくて哀れな存在になっている。吉田大八監督は、三島由紀夫のこの原作に「自由さ」を感じたと対談で述べていたが、UFOが実在していたのかどうかもハッキリとは分からない「自由さ」「曖昧さ」を楽しむ映画でもある。そもそも人間自体が、ハッキリとはしない「曖昧」で「自由」な存在なのだから。強い確信に満ちた存在の方が怖いのだ。あっちこっちブレながら、悩みつつ、間違え、右往左往する存在こそが、人間の魅力であり、存在の面白さだ。地球や人間を宇宙人の目線から相対化して見せた原作であり、映画でもある。
製作年:2017年
製作国:日本
配給:ギャガ
上映時間:127分
監督:吉田大八
原作:三島由紀夫
脚本:吉田大八、甲斐聖太郎
製作:依田巽、藤島ジュリーK.、市村友一、吉川英作、中川雅也
エグゼクティブプロデューサー:小竹里美
プロデューサー:朴木浩美、鈴木ゆたか
撮影:近藤龍人
照明:藤井勇
美術:安宅紀史
編集:岡田久美
音楽:渡邊琢磨
劇中曲(作詞・作曲):平沢進
キャスト:リリー・フランキー、亀梨和也、橋本愛、中嶋朋子、佐々木蔵之介、羽場裕一
☆☆☆3
(ウ)
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