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「すばらしき世界」西川美和

映画館で見逃したくなくて、公開早々に劇場に行く。今年2本目の映画館での鑑賞。

役所広司の存在感が圧倒的だ。強さと弱さ。やさしさと怒り。西川美和という監督は、映像世界の演出というよりも、役者たちのキャラクターづけの人間的な複雑さの造型、演出が見事だ。役所広司だけではなく、登場人物のそれぞれが一面的ではなく、人間的な陰影がある。役所広司演じる三上の物語に奉仕していないのだ。テレビマンで作家志望の仲野太賀のダメ男ぶりと三上への共感で自らが変わっていくところ、外見で人を疑い、偽善者と罵られながらも支えようとする六角精児、ケースワーカーの北村有起哉の冷たさも型どおりではなく、抑えた演技がまたいい。兄貴分の白竜のメンツの張り方、キムラ緑子の三上を逃がそうとする思い、テレビ屋の長澤まさみの美人の自覚のないままの身勝手さ、弁護士の橋爪功もまた一面的な善人には描かない。梶芽衣子も久しぶりに観たが、かつての「女囚さそり」が優しいお母さんで登場するのも味わい深い。三上の相手をする端役のソープ嬢だって、なんだか愛おしい。それぞれの登場人物にそれぞれの人生の物語がある。

刑務所を出所したヤクザたちの行き場のない現実を追いかけたドキュメンタリーがあったと思うが、それも映画の物語に取り入れている。三上がチンピラと暴力沙汰になる時の生き生きとした様子、人間が本来持っている暴力衝動と欲望。一方で、必死に自らの怒りをこらえる場面の苦しさ。誰にでもありそうなちょっとした言葉の暴力や差別の意識こそがリアルに三上を追い詰める。幼き頃にいた施設を訪れ、母に手を振って別れた場面を振り返る三上、歌を老婆一緒に歌い、子供たちとサッカーする場面のせつなさ。かつて関係のあった女、安田成美とは会えずに、電話の声だけというのがまたいい。人生は複雑でうまくいかない。単純でストレートな三上の苦悩は、私たちが忘れ去って、誤魔化しながらやり過ごしているものでもある。そこに正しさなんていうものはない。空は広い。

2021年製作/126分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画
監督:西川美和
原案:佐木隆三
脚本:西川美和
製作:川城和実 潮田一 池田宏之 依田巽 角田真敏 鈴木貴幸 堤天心
エグゼクティブプロデューサー:濱田健二 小竹里美
プロデューサー:西川朝子 伊藤太一 北原栄治
撮影:笠松則通
照明:宗賢次郎
美術:三ツ松けいこ
編集:宮島竜治
音楽:林正樹
キャスト:役所広司、仲野太賀、六角精児、北村有起哉、白竜、キムラ緑子、長澤まさみ、安田成美、梶芽衣子、橋爪功
☆☆☆☆4
(ス)
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テーマ : 映画レビュー
ジャンル : 映画

tag : 暴力 社会派 人生 犯罪 ☆☆☆☆4

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ヒデヨシ

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映画にまつわる雑文です。
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2019年ベスト5
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            <日本映画>
              「散歩する侵略者
            /予兆 散歩する侵略者」
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            次点「彼女がその名を知らない鳥たち」
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          2016年ベスト10
          <洋画>
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          <日本映画>
            淵に立つ
            クリーピー 偽りの隣人
            海よりもまだ深く
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            SCOOP!
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          2015年ベスト10
          <洋画>
            やさしい女
            さよなら人類
            さらば、愛の言葉よ
            毛皮にヴィーナス
            雪の轍
            愛して飲んで歌って
            サンドラの週末
            サイの季節
            インヒアレント・ヴァイス
            ソニはご機嫌ななめ

          <日本映画>
            海街dairy
            岸辺の旅
            FOUJITA
            百円の恋
            この国の空


          2014年ベスト10
          <洋画>
            エレニの帰郷
            グランド・ブタペスト・ホテル
            罪の手ざわり
            ウルフ・オブ・ウォールストリート
            ジャージー・ボーイズ
            インサイド・ルーウィン・デイヴィス
            6才のボクが、大人になるまで。
            フランシス・ハ
            ウォールフラワー
            ある過去の行方

            <日本映画>
            そこのみにて光輝く
            ニシノユキヒコの恋と冒険
            紙の月
            Sventh Code
            私の男


              2013年映画ベスト5
          <洋画>
            1、「愛、アムール」
            2、「ホーリー・モーターズ」
            3、「オンリー・ラバーズ・レフト・アライブ」
            4、「いとしきエブリデイ」
            5、「ムーンライズ・キングダム」
            ※番外「カリフォルニア・ドールズ」(1981年)

            <日本映画>
            1、「共喰い」
            2、「さよなら渓谷」
            3、「恋の渦」
            4、「リアル 完全なる首長竜の日」
            5、「Playback」(2012年)


            2012年映画ベスト10
          <洋画>
          2、「少年と自転車」
          3、「Pina ピナ・バウシュ 躍り続けるいのち」
          4、「ライク・サムワン・イン・ラブ」
          5、「きっと ここが帰る場所」
          6、「ドライヴ」
          7、「風にそよぐ草」
          8、「恋のロンドン狂騒曲」
          9、「おとなのけんか」
          10、「別離」
          次点 「裏切りのサーカス」
        番外
          「永遠の僕たち」
          「J・エドガー」
          「家族の庭」

        2、「かぞくのくに」
        3、「演劇1&2」
        4、「夢売るふたり」
        5、「アウトレイジビヨンド」
        番外 「ヒミズ」


      2011年映画ベスト10
      2,「愛の勝利を」
      3,「ブルーバレンタイン」
      4,「愛する人」
      5,「クリスマス・ストーリー」
      6,「トゥルー・グリット」
      7,「SOMEWHERE」
      8,「さすらいの女神(ディーバ)たち」
      9,「エリックを探して」
      10,「シリアスマン」
      次点,「エッセンシャル・キリング」

    2,「嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん」
    3,「あぜ道のダンディ」
    4,「マイ・バック・ページ」
    5,「冷たい熱帯魚」

    2010年映画ベスト10
    3、フローズン・リバー
    4、アンナと過ごした4日間(2008)
    5、Babble/バブル(2005)
    6、パリ20区、僕たちのクラス
    7、クレイジー・ハート
    8、ずっとあなたを愛してる
    9、千年の祈り
    10、シルビアのいる街で
    次点、闇の列車、光の旅

    3、川の底からこんにちは
    4、さんかく
    5、ノルウェイの森
    次点、乱暴と待機


2009年映画ベスト10
    3、リミッツ・オブ・コントロール
    4、あの日、欲望の大地で
    5、人生に乾杯!
    6、ウェディング・ベルを鳴らせ!
    7、チェンジリング
    8、ロルナの祈り
    9、レスラー
    10、夏時間の庭

<日本映画>
    1、ディア・ドクター
    2、空気人形
    3、ウルトラミラクルラブストーリー
    4、インスタント沼
    5、ノン子36歳(家事手伝い)
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